2012年4月6日金曜日

インターネット医療・健康はネットでも守られる


第2章 インターネット医療の可能性

二四時間接続で高齢者医療に貢献 NTTがサービスを開始したOCN(オープン・コンピュータ・ネットワーク)専用回 線を持っている企業のなかにはすでに常時接続し支店との間でテレビ会議を実現してい る企業もあります。 当クリニックでもOCNを導入しています。OCNを導入した実感として、医療機関こ そ常時接続が最も望まれる分野ではないかと思うのです。各家庭が常時接続となれば、 これからますます増える独居老人の世帯などは、家庭内に様々なセンサーを設けてデー タを収集し、パソコンを通じて医療機関や福祉機関などに送るようにしておけば、何ら かの異常をいち早く知ることが可能になるはずです。 実際に東京・豊島区のある町会ですでに実施されています。ポットや炊飯器にセンサー を備え付け、使用すればネットを通じて、ネットの管理者に届くようになっています。 食事の支度ができるならば、健在であることが離れていてもわかるわけです。 機材の提供や、ネットの管理などはボランティアに頼っているのが現状だそうですが、 将来的にはこうしたネットの整備が公の予算で行われるようになることが望ましいでし ょう。

他人を気遣うことのでき、共生できたかつての地域社会の利点をネットワークで実現す ることが可能になるわけです。 機器やシステムを使わなくても、近所で声を掛け合えば済むことですが、ライフスタイ ルが変わったいまでは、昔に戻って地域社会の良さを見直そうとしても無理です。 かけ声だけに終わるのがおちでしょう。 むしろ新しいネットワークを築くことで、個人個人の幸福がより具体的になるのではな いかと考えます。 高齢者とパソコンの関係は、現在は良好とはいいかねます。インターネットにしても接 続のための設定の複雑さが敬遠の大きな要因にもなっています。しかし、これも一過性 のもの。どんどん手軽で、安定した接続が可能になりつつあります。 クルマが内燃機関の事をほとんど意識せずとも運転できるようになったように、パソコ ンも便利な道具として、必ず高齢者の生活に欠かせないものになるはずです。


インターネットで変わるライフスタイル 現在のインターネットでは商取引の決済を任せられるだけの信頼度はまだありません。 クレジットカードや健康保険証のナンバーがクラッカー(ハッカーと呼ばれることもあ りますが、ハッカーはコンピュータに関する熟達した技術と知識をもった人々のことで 、たとえば、クラッカーによってばらまかれたウイルスなどを見つけ、ワクチンを処方 できるような人々を呼ぶ場合に使います)に漏れる恐れがあるからです。悪用されるケ ースもでています。 しかし、これは暗号ソフトの開発やシステムの変更でわりと近い将来解決される問題で す(もちろん完璧なシステムはありえません。クラッカーとのいたちごっこは永遠に続 くでしょう)。

インターネットで電子マネーのやり取りが自由にできるようになれば、銀行や証券会社 の機能は大きく変わるでしょう。現在の金融界は来るべきビッグバンに戦々恐々として いますが、それよりももっと大きな変化が訪れるのではないかと思います。 現在、多くの医療関係ホームぺージで行われている医療相談は、雑誌や新聞などに連載 されている健康相談のコーナーと同じ扱いにすぎません。新聞や雑誌なら原稿料がもら えますが、ホームページの場合は純然たるボランティアです。もちろん、今のような形 のままで報酬を要求できるわけではありません。

今の医療相談の限界がみえているからこそ、有料化という選択肢もあるのではないだろ うかということです。画面上にクリックすれば、電子マネーが払える加金ボタンを付け 、そこから先は有料相談とすることも可能でしょう。 インターネットによって在宅勤務などのテレワークスタイルが増えていくことも容易に 予想できます。社団法人日本サテライト協会が実施した調査によれば、月一回以上の在 宅勤務をしているテレワーカーは八〇万人と推測されていますが、二〇〇一年には二九 五万人以上にまで増えると予測されています。アメリカではすでに一一二〇万人のテレ ワーカーが存在し、二〇〇一年には二千万人を越えるとみられています。 インターネットの普及によってまず、通勤や出張などの無駄な時間がなくなります。距 離は制約条件ではなくなり地球は狭くなります。情報が増えれば、よりよい品物を見つ けるための判断力が増すので、買い物をする際に店舗を巡る無駄や店舗まで出かける無 駄もなくなります。


何歳で子どもたちは炭鉱で動作するように残すか?

一見、時間が増え余裕が生まれるように思われますが、無駄だと思えた通勤時間にじっ くりと考えるための時間をとれたはずが、瞬時に決断を迫られるような場面の連続にな る恐れもあります。人によっては忙しさが増す結果になるかもしれません。ストレスを 軽減するためのシステムが逆にストレスを増す事になることも考えられます。 新たなライフスタイルが生まれる中で、体だけではなく、メンタルヘルスの面からイン ターネットを改めて見直す必要が出てくるでしょう。 しかしなんといっても社会全体で見れば非常に低エネルギー低コストの社会が実現され るようになると予測されます。 二酸化酸素による地球温暖化は待ったなしで進んでいます。インターネットは環境にと っても素晴らしい選択であることは間違いないでしょう。


ホームページに救われた 「あのとき、インターネットがなければどうなっていたかわかりません」 ある日突然、長年連れ添った妻が卵巣がんに侵されていることがわかり、呆然自失にな ってしまったとその男性は言いました。病気一つしたことがなく、デザイナーとして超 多忙の彼を支え続けてくれた奥さんでした。仕事をする気力も失せ、入院した妻のいな くなった家庭は荒れ放題になってしまったのです。 成人し、独立した娘たちがときには訪れて彼を励ましていたのですが、憔悴していくば かりでした。そんなとき、ふと思い立ってインターネットの画面と向かい合ったのだと 言います。彼は職業柄パソコンは必携で、ホームページ作りなども依頼されることが多 く、必要に迫られてインターネットにも早々と参加していました。 「がんに関する本も何冊か読んで見ましたが、不安におびえる妻と、妻が入院していな くなってしまった私自身の喪失感などを救ってくれるようなものはなかったのです。ど んどん気が滅入るばかりでした」 そんなとき、このがんのリンクサイト「Onco」( を見つけたというのです。

「インターネットでがんに付いて調べてみようと思ったわけです。そして、Oncoに 行き着いたとき、そこから行ける場所の多いこと、そして、その情報量の膨大なことに 驚きました。妻の病気に関して、私はどんなことでもできるだけ多くの知識を持ってい たいと思うのですが、医者はごくわずかなことしか教えてくれません。素人が知ってな んになる、といわれ、知りたいという家族の気持ちをわかってもらえないもどかしさが あったんです。それでもあえて聞けば教えてもらえたかもしれませんが、遠慮もしてい ました。もし、心証を悪くされたらと思うと言いたいことも言えません。そんな気持ち が無力感にも繋がっていたと思います」

「Onco」サイトに集っているアメリカのがん関係の医療機関が提供するデータの充 実ぶりに彼は目を見張りました。微にいり、細にいり、しかも患者だけでなく、取り残 された患者の家族のケアも手厚くフォローしてあるのです。クリック一つで、知りたい ことがどんどん出てくる感じだったと言います。 中でも彼を勇気づけたのは「TakingTime」(htto://cancernet.nci.nih.gov/takig_time/timeintro.html) というホームページにあった一つの絵物語でした。がんを告知され た夫と、彼を支える人々が描かれた挿し絵が何とも温かくそして力強いのです。デザイ ナーである彼が言いました。これほど感動的な絵を見たのは久しぶりだったと。勇気と いうものを教えてくれる絵だったと。 「人間はすてたもんじゃないなと思いました。この素晴らしいホームページを作るため に多くの人々が膨大な労力をつぎ込んでいます。しかもほとんどが無償のボランティア のはずです。インターネットを通じて人間の持つ隣人愛のようなものに触れた気がしま した」 と、彼は言いました。 私もこの絵を見ました。描いた人の優しさが伝わって来ます。 たった一枚の絵にも勇気づけられることがわかった彼は、いま自らのホームページを開 設し、自分の作品を世界に向けて発信しています。 インターネットで、多くを与えてもらったから、次は自分の番だと。 こうして彼のように、与える人がいるからこそ、インターネットは充実していくのです 。

「Onco」でインターネットの実力を知った彼は、日本でもホームページを開いてい る多くの医師がいることを知り、インターネットで医者に聞きたかったことをぶつけて みようと思いました。 「インターネットはどこの誰かと問われないし、年齢、地位や財産なども不明ですから それらによって相手が態度を変えることもないでしょう。電子メールなら、医者と患者 が対等に話ができることに感動しましたね。妻の病状と自分の立場を説明しアドバイス を請うと実に丁寧なメールをいただきました。今では主治医の治療方針にも納得してい ますから、妻と一緒にがんばろうという意欲がわいてきました。インターネットには本 当に感謝しています」 限界があると感じながらも行っている医療相談ですが、やはり患者さんたちの役にたっ ているのだ思うとこちらも励まされます。


オンタリオ州の健康保険カードを更新する方法


遠隔医療の試み インターネットと医療の関わり方として、話題にされることが多いのが遠隔医療です。 最近ではHDTV(高品位テレビ電話)を通して国立小児病院の医師たちが1歳の女児 の先天性気管狭さく症(肺動脈が気管を圧迫するなどで呼吸困難になる)の手術をカナ ダの専門医の指導を受けながら成し遂げたニュースが報じられました。 カナダのトロント小児病院のロバート・フィラー外科部長が約四年前に始めた気管の狭 い部分に金属製の網を挿入して広げるという手術法しか女児を救う方法がなかったとの ことです。

手術例も世界で八十例と少なく、フィラー医師の指導のもとでなければ、成功は難しい との判断でしたが、女児をカナダに搬送するのもフィラー医師に来日してもらうのも難 しく、テレビ電話手術を試みることになったそうです。 内視鏡による画像を見ながら、気管支を広げる作業はミリ単位の正確さが要求されるも のでしたが、この遠隔医療で使われたシステムは十分にそれに応えたわけです。高品位 テレビの画像をおそらく衛星回線を通じて双方に送ったようですから、インターネット を利用したわけではないのですが、離れた所にいる患者に対して治療を行うという意味 では、一般の人に大きなインパクトを与えたようです。 遠隔医療に関しては、わが国では遠隔医療研究会準備委員会という組織が作られ、よう やく準備段階に入ったばかりです。ここでの定義は「映像を含む患者情報の伝送に基づ いて遠隔地から診断、指示などの医療行為及び医療に関連した行為を行うこと」として います。

遠隔医療にあたる英語が(telemedicine)であり、この言葉には必ずしも映像のやり取 りは含まれません。電子メールによる相談もそこに含まれると考えるのが欧米ですが、 日本では映像を意識したものとなっています。 一九七〇年代から、八〇年代にかけて、マルチメディア構想というものが各地で立ち上 がり、その中に在宅ケアの考えも含まれていましたが、当時の機器やソフトの画像処理 能力が低すぎて、単なる実験に終わったという経緯があります。当時は地域毎に新しく ネットを構築したりしなければならなかったのですが、いまならインターネットがある ため、その必要はありません。しかもハードやソフトの開発も急速に進んでいる状況で すから、遠隔医療の環境は整いつつあると言えるでしょう。このように考えれば遠隔医 療もインターネットの一部としてとらえることができるのではないでしょうか。


インターネットで医療の地域差をなくす まず、双方向メディアの環境さえ整えば、この章の始めに上げた例でわかるように、最 先端の医療をどこにいても受けることができるため、地域による格差を解消することが できるでしょう。 福岡の病院と長崎県の対馬の病院との間でも画像を送って狭心症の手術を行う態勢が作 られています。 両者をISDN回線で結び、対馬から送られてくる画像を福岡にいるベテラン医師が画 像を見ながら指示し、それに従って現地の医師が執刀します。これまでは狭心症の急患 が出ると対馬から自衛隊のヘリコプターで搬送するか、病状の安定を待って転院させて いたのですが、対馬の病院と福岡の病院とでは死亡率に約4倍の開きがあったそうです 。その地域差をこれで埋めることができると期待されています。 これは患者にとっても朗報ですが、医師にとっても画期的なことです。あってはならな いことですが、特殊な医療技術や情報が、一部の病院や医師に独占されてしまうおそれ を払拭することができるからです。

現在、国立がんセンターが中心になって全国一一ヵ所のがんセンターが「がん診療施設 情報ネットワーク」に参加しています。週一回、各地の医師が最新の情報を発表して質 問を受ける会議を開いています。 がんセンターでは同様の動きが看護婦や薬剤師の間にもひろがっているそうです。以前 は各がんセンターの間でも交流はなかったといいます。 ネットワークができたことで電子メールなどにより、病院間で職員レベルの交流が始ま り、診療相談なども積極的に協力できる環境になったわけです。医療機関のこうした動 きは患者にとって歓迎すべきものです。閉鎖的な病院同士の壁にインターネットによっ て風穴が開けられたのです。


インターネットで健康管理 自宅から診断に必要なデータを送ることができたり、自宅にいる患者の様子を医師や医 療従事者が見守ることができれば、わざわざ病院に出向かなくてもよいことになります 。 そもそも病人が病の身をおして病院に通うことは大きな負担を患者に強いることですか ら、日常の静養の場に医師が来てくれるのが患者にとっては理想のはずです。かつては 町医者なら往診する姿は日常的に見られましたが、現在は医療効率の面からいって不可 能となっています。 しかし、二四時間、遠隔医療によって見守られているとしたら、医師がつねに傍らにい るような安心感を得られるのではないでしょうか。


どのようなシンボルは、第十周年に使用されます

心理的には患者の理想に近づくわけです。独居老人や痴呆老人の在宅ケアはこれから大 きく医療財政を圧迫してくることは確実です。医療の現場だけでなく福祉との関わりで きめ細かなコンセンサスを作り上げていかねばなりません。 遠隔医療研究所の梶屋研究員はホームページの中で次のような未来図を描いています。 「身体に密着し通常室内で携帯動作可能な端末の標準化を提案します。基本的に心拍数 、血圧、呼吸数、体温を測定しセンターへ送る、また電気抵抗、超音波を利用した他の 計測器(尿検査)もオプションで考えられます。データを受け取ったセンターでは本人 性を確認し過去の診断履歴をもとにデータの比較を行い、また人口知能がエージェント となり異例性あるいは進行性を発見すると警報を発し問診、診断の必要性を知らせ患者 宅に連絡する。そして巡回中の診療車にデータを回し現場へ急行させるなどのことが考 えられる」

端末に接続する機器の開発などはコンピュータ業界だけでなく家電業界、ハウジング業 界などとも連携して進めていく必要があるでしょう。 横になっただけで、心電図や脳波などが測定できるベッドや、毎回の排尿で尿検査が自 動的にできるトイレなどの開発も進んでいると言います。これからは我々医師のあくま でも患者の側に立つという意識が改めて問われることになるでしょう。 一人一人の医師の心構えにも変革をもとめられるのが、これから始まるインターネット 医療革命なのかもしれません。

&技術の進歩が人類の幸福に貢献する、などというと、二〇世紀初頭の科学黎明期に謳わ れたスローガンのようですが、インターネットにはそれだけの可能性が含まれています 。今世紀も世紀末となり、科学が本当に人類のためになっているだろうかという、疑問 が湧いてきた今、最後に現れた福音に例える人もいるほどです。 また、インターネットを使えば、通常は医師の診療が困難な場所に対しても専門医によ る診療の機会を得られるという利点が生まれます。船舶や飛行機の中、極地や海底、果 ては宇宙船の中でさえ、十全な治療が受けられるようになるのです。遠隔医療が可能な らば、決して夢物語とはいえなくなるでしょう。

最後になりましたが、近年しきりに叫ばれている国際貢献の場でもインターネット医療 は活躍することができるのではないでしょうか。 躍する日本人のプロジェクトには、日本からも支援を厚くすることができます。長期休 暇を取り、ボランティアとして現地に赴いた医師たちの行為は崇高ですが、彼らに負け ない気持ちは持っていても諸事情で日本を離れられない医師は多くいます。インターネ ット医療を国際貢献の場にもっと活用すれば、そんな彼らの気持ちを無駄にすることも なくなるでしょう。


岡山県で行われていること 現在岡山県ではインターネットを全面的に取り入れた情報ハイウエー構想が実現化され ようとしています。それを伝える新聞記事を紹介しましょう。

情報通信が開く未来の都市生活 全国で進む基盤整備
在宅勤務など探る 情報ハイウエー構想続々

今週、岡山県総社市の一般家庭約四十世帯に「インターネット冷蔵庫」が配備される。冷蔵庫に液晶画面を設置し、常時インターネット情報を表示する。画面に向かって「ご み」「介護」などをよびかけるだけで、該当するホームページを呼び出すことができる。キッチンを地域コミュニティーとの接続窓口にしようという試みである。 都市や家庭に光ファイバー網を張り巡らせ、様々な情報を交換し合う「情報ハイウエー構想」が全国各地で動き出した。「岡山は情報ハイウエー先進地域だ」・。同県企画部長も勤めた努めた藤井健建設省住 宅政策課課長補佐は言い切る。県をまるごとインターネットの実験場にしようという「岡山情報ハイウエーの構想」は、九九年度までに岡山、倉敷など県内の都市を世界でも 最高水準の毎秒155―622メガビットの光ファイバー回線で結ぶ事業だ。幹線に複数の有線放送(CATV)を接続し、公共施設や企業、一般家庭をインターネットで結 ぼうとしている。

九七年度の実験テーマは「遠隔医療」「TV会議」など三十九。今春には第一弾として 光ファイバーやインターネットによる遠隔授業の実験が始まった。光ファイバーやイン ターネットを低コストで利用できるようになれば、時間や空間による制約を乗り越えて 生活大きく変えられる。未来都市のひとつのあり方を提案することにもなる。 岡山だけではない。岐阜県大垣市や横浜市では下水管内光ファイバーを敷設する試みが 始まった。産官学が結集して、東京長野、山梨を結ぶ中央道沿いの地域で高速通信の実 験をする「中央コリドー高速通信実験」など、広域事業も目白押しだ。情報通信行政を 担う郵政省もこうした次世代事業を後押しする考えだ。 マルチメディア時代のライフスタイルを探ろう・建設省は九七年度から、一風変わった プロジェクトに着手した。 (日本経済新聞九七年六月一一日)


まるで絵に描かれたような未来社会を紹介する語り口の記事ですが、これは二、三年後 には実現されることなのです。この岡山県のプロジェクトには「岡山医療情報ネットワ ークシステム研究会(OMIN)」が医療関係として加わっています。OMINには岡 山県医師会、岡山市医師会、岡山大学医学部、国立岡山病院など十六の医療機関、一七 の企業、県などが参加しています。 この構想ではインターネットが暮らしと密着してとらえられています。そんな中で医療 機関がどう代われるか注目されます。遠隔授業の考え方などは、不登校児の問題解決に も糸口がみえそうな気がしてきます。

インターネット社会がやってくれば、誰もが情報を平等に受け取れるわけで、専門の知 識も難なく得ることができます。そうなると専門職の立場がなくなるのではという不安 を持つ方がおられるかもしれませんが、それは逆だと思います。 情報の質が上がれば、真に求められる情報を与えることのできるエキスパートの存在が 注目されるでしょう。しかもその専門分野はより細分化される可能性もあるため、今度 はそれらを統合的にとらえることのできる専門家も必要となって来るはずです。 よくも悪くも、オタクと呼ばれるマニアックな専門家が注目され、さらにそうした状況 を分析できるオタク評論家という肩書きの人達がマスメディアで何人も活躍されていま すが、ある種の情報化社会の雛形のような気がしてなりません。 もちろん、インターネットを契機として語る情報化社会というのは、受け取るだけなく 発信することも含まれるのですから、受け取るだけで内側にこもるオタク的な発想とは 百八十度異なるものになるであろうことは確かです。


インターネットを利用した有料会員サービス 大阪の携帯電話の大手販売代理店が米国の財団法人と組んで二四時間体制の医療行為サ ービスを始めました。利用者は携帯用検査キットを借り、自宅や外出先で計測した各種 データをもとに、東京の応答センターにいる医師にアドバイスを仰ぎます。海外でも利 用できるといいます。

会員はまず、全国千百カ所の指定病院でカルテを作成します。薬事法の許可を得たモデ ム付きの小型の測定装置で心電図をとり送信。医師は心電図に心拍数や尿検査などの結 果も含めて体調を判断、緊急処置から症状に応じた医薬の助言をします。治療や入院が 必要な場合は最寄りの医師や病院を紹介します。「高齢者が心電図測定だけのために病 院通いする手間も省ける」ということで考えられたサービスだと言います。 サービスは二四時間体制。医療行為なので一回につき百五十点の保険点も加算されます 。電話による再診は保険でもみとめられていることからこれは医療行為と認められます 。ホームページで電子メールを使って行われる医療相談とこの電話による再診の違いは 非常に微妙です。インターネットを通じてデータを医師に渡した上での相談なら、医療 行為になるのかならないのか。今のままでは対面医療が形骸化してしまう恐れもあるわ けで、このままインターネット医療が進めば、きちんとした法の整備も迫られることに なるでしょう。

また、インターネットのホームページ制作代行のベンチャー企業が始めたのは、インタ ーネットによる医療・福祉関連情報の有料提供サービスです。 超高齢化社会の訪れるとともに、高齢者介護や高齢者医療などの分野の情報が氾濫する ことが予想できます。より質の良い情報がもとめられるのは必須ということで、有料の 会員を募集しています。

ホームページで提供予定の情報としては、病院、療養施設、デイサービス、老人ホーム 、福祉事務所、保健所、リハビリ、ホームヘルパー、人間ドッグ、カウンセリング、在 宅介護用住宅改造、医療・介護施設、保険、ホームサービス、行政。まず、全国の病院 千件、首都圏の訪問看護ステーション三百件などのデータを収録し、一ケ月ごとに更新 し、データベースを拡大していく予定だといいます。 け付けるほか、合同相談会などを設けるとしています。医療機関、福祉機関の側から積 極的にインターネットに接続し、情報を提供するようになれば、本来ならこのような有 料サービスは成り立たないでしょう。 現在は、医療機関の情報の発信が少ないため、このようなサービスを利用しないと、ど うやって医療機関を選んでいいのか基準がみえてきません。 医師法や医療法でがんじがらめにしばられている面もあって無理もないのですが、イン ターネットがそうした状況をつき崩す起爆剤になることを願っています。


電子カルテの導入 厚生省は平成十一年度にも、医師が患者の診療内容をパソコンに入力して保存する「電 子カルテ(診療録)」を導入する方針です。これにより、複数の医療機関がパソコンを 通じて患者の検査記録などを共有することができるため、「二重検査」などの無駄が省 けます。また、患者の病状を迅速に把握できるようになり、病院が資材管理の効率化を 進めるなど医療費抑制にもおおいに役立つでしょう。


電子カルテの改竄にどう対処するかなど、まだ検討の余地はあるでしょうが、電子化さ れればデータベース化や転送などが容易になるため大歓迎です。 現行の医師法では、医療機関は紙のカルテに薬の名前などの必要事項を記入し五年間保 存するよう定められていますが、これが改められることになるわけです。 統一フォーマットはまだできていないようなので、インターネットを通じてよりよいフ ォーマットの募集などをすれば便利で多くの人が納得できるものができあがると思うの ですが、どうなることでしょう。 医療機関はカルテにもとづいて医療保険に治療費を請求する「診療報酬明細書」を作成 しなければなりませんが、現在はこの事務負担が大きいため、電子カルテの記載内容が 明細書に自動的に転記できるソフトができれば大いに喜ばしいことです。

第3章:インターネット医療の今後をさぐる>>

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